#5 三足の草鞋

昨日、三足の草鞋を履きたいという話をした。すなわち、弁護士・心理士・学者として、それぞれの専門性を持ちつつ社会に貢献するという道である。しかし、そのための現時点での具体的なステップについては、まだ話していなかった。

まず、弁護士としての道について。現在、司法試験を受けるための試験である予備試験に向けて、予備校を活用しながら日々学習を続けている。ただし、今年の合格は、正直なところ非常に厳しいと感じている。悔しさはあるが、現実として受け止める必要がある。そのため、今年は行政書士試験に確実に合格することを一つの通過点としたい。ただし、あくまでこれは司法試験合格のためのステップである。理想は、「司法試験の勉強をしていた延長線上に、結果として行政書士に合格していた」という形だ。主軸はあくまで司法試験であり、行政書士試験はその補助的な意味を持つに過ぎない。

次に、心理士としての準備について。こちらも中長期的な視点が必要である。まずは心理学の知識を広く網羅的に習得することが不可欠であり、その初動として、2026年より心理学検定1級の取得を目指す予定だ。司法試験の学習の合間、あるいは息抜きとして、1日30分〜60分の学習時間を確保し、夏の検定試験(予備試験終了直後)に臨むつもりである。具体的な学習内容や計画は、2026年になってから「ことばノート」にて随時記録・共有していく。

言語学者としては、まずは前提として、学部の卒業論文を通じて専門的な知識の獲得と整理を進めていくことになる。2025年および2026年の2年間で、学問的な知見を深めながら、そこから得られた理論や発見を、この「ことばノート」を通じて言語化していきたい。

兎にも角にも、現時点において最も高い壁であるのは、やはり司法試験予備試験の合格である。三足の草鞋を成立させるためにも、まずはこの最初の一足(司法の草鞋)を確実に履きこなすことが、何よりも重要だ。

最後に、「ことばノート」の意義について述べ、締め括ろう。

第一に、これは僕にとって「検索可能なノート」であるという点が大きい。自分が関心を持つすべての領域(言語学、心理学、法学以外にも教育学など)を一か所に集約できる場所として設計している。ここにある検索機能は、僕の記憶の補助装置としても機能し、必要な情報をすぐに呼び出せるという意味で、実用的だ。そして何より、これはほとんど僕自身のために記録しているものなので、内容や表現に過度な制約を設ける必要もない。雑多であって構わないのだ。

第二に、「見られている」という感覚も、ある種の動機付けとして作用している。昨日は、Robert Cialdiniの Influence: Science and Practice や、Peter Gollwitzerの「目標の自動化」理論を紹介したが、まさにああいった理論が僕自身にも働いていると感じる。目標を言語化し、他者の目に触れる形で共有することで、自己規律が強化されていく感覚がある。

前回も引用したため、Influence: Science and Practice の人を動かす6つのアプローチを、改めて全て先に紹介しておこう。これは、アメリカの社会心理学者・Robert Cialdiniが提唱したもので、人間が他者のどんな影響を受け、行動しているのかを示している。

① Reciprocity(返報性):人は何かを受け取ると、それに対し、何かを返さなければならないという心理的な義務感を抱く傾向がある。

② Commitment and Consistency(一貫性):一度表明した意見や行動と整合するように、その後の行動を選択する傾向がある。

③ Social Proof(社会的証明):多数の人々が行っていることを「正しい」と認識し、それに従おうとする傾向がある。

④ Liking(好意):好意(好感)を持つ人からの提案や依頼には、他と比べより従いやすくなる傾向がある。

⑤ Authority(権威):専門家や高い地位にある人の言動に人は、流されやすいという傾向がある。

⑥ Scarcity(希少性):数や時間に限りのあるものには、より高い価値を見出し、行動が促されやすくなるという傾向がある。

話を戻して、第三に、この「ことばノート」は、ある種の硬めのプロフィールとしても機能しうる。大学院のこれからの指導教員や教授陣に対して、自分がどのような関心を持ち、どのような知的スタンスを取っているかを伝える資料として活用できるし、また、知的関心を共有する新しい友人との対話の入口にもなる。これはCialdiniの言うところの「返報性の原理(reciprocity)」にも通じる側面があるだろう。自分の内面を開示することは、相手の内面を引き出す誘因にもなる。

第四に、僭越ながら、このノートにはある程度の社会的意義もあるのではないかと考えている。僕は、「法」「こころ」「ことば」という三領域をまたぐ姿勢をとっているが、これらを横断しながら知識を整理・統合する営み自体が、「専門性の分断」に対する一つの応答(アンチテーゼ)となりうる。言い換えれば、「ことばノート」は、ある特定の学問領域の断片(点と点を)を橋渡しする(線にする)ための私的実験であり、他の誰かにとっても、専門領域の垣根を越える学びのロールモデルになれればと願っている。また、ここに書かれる内容の一部は、比較的難解な学術書や論文を、僕なりの視点と言葉で咀嚼し直したものである。そうした再構成は、ひとつの教育的試みとも言えるかもしれない。英語についての記述も含め、ことばを通して知の広がりと深化を促す場にしたい。そして、僕自身の内面と、社会的な営みがどのように「ことば」を通じて結ばれていくか、その軌跡を残していく。もしそれが、どこかの誰かの思索のきっかけや、学びのモチベーションになれば、それはこの上ない喜びである。

【参考文献】

Cialdini, R. B. (2001). Influence: Science and Practice (4th ed.). Allyn & Bacon.

【タグ】

社会心理学, 説得理論, 動機づけ, 行動経済学, コミュニケーション理論, 目標達成, 認知心理学, 人間行動, 心理学