全ての道はローマに通ず。
この有名なことわざは、12世紀のフランス神学者アラン・ド・リール(Alain de Lille)によるラテン語の格言に由来する。
Mille viae ducunt homines per saecula Romam,
Qui Dominum toto quaerere corde volunt.
(千の道が時を超えて人々をローマへ導く。主を全身全霊で求める者たちにとって。)
現代では「手段は違っていても同じ目的に達すること、真理は一つであること」といった意味で用いられる。我々が知るこのことわざは、日本語は英語の “All roads lead to Rome.” や、フランス語の “Tous les chemins mènent à Rome.” から輸入されたのであろう。
この言葉を学問に敷衍するならば、こう言うことができる。
「すべての学問は哲学に通ず」
学問を深めていくと、次第に個別の問いが、より根本的な問いへと収束していく。そこに立ち現れるのが「哲学」である。
そもそも「哲学」の語源である philosophia は、古代ギリシア語で「知を愛すること」を意味し、当時はあらゆる学問を包括する言葉として用いられていた。科学や芸術、なども哲学の一部であった。それぞれが細分化され、発展していったことで、現代の多様な学問分野が成立している。
言語学もその例外ではない。音声、語彙、文法、意味といった言葉の形や使われ方をどんどん突き詰めていくと、必然的に「人はなぜことばを持つのか」「ことばは思考とどう関わるのか」といったような根源的な問い(哲学)に行き着くのだ。
したがって、言語学とは、哲学へと通じる一つの道である。そしてその道は、まさに「全ての道はローマに通ず」の精神と重なるものだと言える。
さて、実のところ、この記事を書く本来の目的は、岩波新書の『言語哲学がはじまる』(野矢茂樹)をまとめ、学習の記録として残しておくことにあった。
ただ、その前に、どうしても哲学史の大まかな流れを一度整理しておきたくなり、今回はその準備として、こうして筆をとった。
今後、高校生にもわかるような哲学史の入門書を手がかりにしながら、自分なりに咀嚼し、つたないながらも僕自身が考えたことや関連知識を少しずつ書き留めていければと思っている。
【参考文献】
野矢茂樹『言語哲学がはじまる』、岩波新書、2020年。
Alain de Lille(アラン・ド・リール)によるラテン語の格言
※出典として明示されることが少ないため、原典確認は困難ですが、以下のような文献に言及が見られます。 Curtius, Ernst Robert. European Literature and the Latin Middle Ages. Princeton University Press, 1953. 引用格言: Mille viae ducunt homines per saecula Romam, Qui Dominum toto quaerere corde volunt.
【タグ】
哲学, 言語学, 言語哲学, 西洋思想史, 学問の起源, 知の系譜, 野矢茂樹, 哲学史入門